私の住むフランスの町にも、映画「あん」が、やってきました。
とても、とても、いい映画でした。
映画が終わって、帰ろうと立ちあがった時、
友人にばったり会いました。
彼女も、私も、映画に心をゆさぶられて、
心がバクバクしていたのか、
あいさつも、ぎくしゃくしてしまいました。
友人は、しきりに鼻をすすっていて、
「カゼ、ひいちゃって」なんて、ごまかしています。
(というふうに、私には見えます。
だって、あわてて、バッグの中をかきまぜて、
ティシューをさがしてるんですから)
そして、
すばらしい、と大絶賛しています。
私も、とてもよかったと思いました。
どの場面もきれいですし、
静かで、味わいがあって、
数少ないセリフは、どれも、印象的でした。
思い出すたびに、
さらに、もうひとつ、メッセージがあるようにも
思えます。
噛めば噛むほど味が出てくる、スルメか昆布のようです。
さて、
どこが気に入ったか、たくさんありすぎて、
どこから書いていいやら。
3つだけ書くとしたら。
1 「えぇ、なんで?(なんで、既製品のあんこなんか使うの?)
『あん』は心だよー!」
というセリフ。
どら焼き屋さんが、皮は、まぁまぁだけど、あんこがまずい、と
おばさんに言われている場面です。
皮も大事だけど、中身も大事。
既製品なんか使わないで、自分で時間かけて作った方がおいしい。
そして、おばさんが作り方をおしえてくれます。
やさしく、あずき豆を歓迎するように、
どういう道のりをあゆんできたか、耳をすましてきいてあげる。
ゆっくり、ゆっくり、煮あげる。
実際、おどろくほどおいしいあんこができあがります。
なるほど。。。
中身は大事だけど、
そして、いい中身にしたいけど。
そして、いい中身にしたいけど。
でも、それは、そうむずかしいことでもない、
という気もしてきます。
何かをする、のではなくて、
そのまま、を歓迎する、のでしょうか。
深いお話のようでもあります。
2 どら焼きやさんが、皮を焼く時、失敗することもあります。
それを捨てないで、とっておき、
母子家庭の女の子に、差しあげているところ。
そんな皮を「できそこない」と呼んでいる。
「できそこない」でも、
喜ばれて、ちゃんと役にたっています。
3 あずきを煮る時の、アク抜き場面。
その抜き方が、すごく美しいです。
ごしごし抜くのではありません。
水道の蛇口から、細くたらした水が、
スルンと、アクを流してくれるのを待つのです。
そのやさしさが、印象的です。
私だったら、もし「アク」を見つけたら、
がんばって、腕まくりをして、
戦いモードになってしまうはずです。
そうではなくて、
やさしい、やさしい、やり方です。
ちゃんと「アク」は抜けていきます。
などなど。
どんなセリフも、やさしく、
あとあとまで、
話しかけてきてくれます。
フランスのお客さんも、
気に入ってくれたことでしょう。
きょうは、はるばる、フランス日記に来てくださって、
日本映画の感想をよんでくださり、
どうもありがとうございました。
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2 件のコメント:
Chiyoさんいつもおだやかなお話ありがとうございます。「あん」は河瀬さんの作品ですよね。私、同郷なんです。彼女の作品はとても美しくて、でも痛みを伴ってて、だからどんなに惹かれても繰り返し観るということができず、そのうち新作がでても観に行くことなく長く遠ざかってしまいました。出産なさってから作品がやわらかくなったような気がしてました。また戻ってみようかと思います。
usatsubo さん、いつも見にきてくださっているのですね。どうもありがとうございます。うれしいです、とっても。
河瀬さんの、ご同郷の方なのですか。それは、それは。きっと、詳しくお知りなのでしょうね。私は、今回、初めて河瀬さんの作品を観ました。usatsubo さんのおっしゃること、なるほど、と読ませていただきました。また、機会あったら、ほかの作品も観たいと思います。
コメントありがとうございました。
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