2021年7月31日土曜日

ノルマンディー寿司

今、夏休みで、ノルマンディー地方に来ています。
きのうは、思いがけず、「お寿司」をいただけました。

フランスでは、もうこのごろでは、
お寿司パックが、簡単に手に入るようになりました。
ですが、
それは、日本人が作っているものではなくて、
ネタも、
味も、ちょっと怪しげなものが多いです。
買ったことは、あまりありません。

ここ、海辺では、
新鮮な海の幸がたくさん手に入るので、
ぜひ、いいお寿司を作ってほしいと、
ずっと思っていました。

それが、
この地方の方々は、
何しろ、生クリーム大好きですから、
お魚料理も、生クリームソースがほとんどです。
お刺身なんて、ありません。
かろうじて、あるのは、
生ガキ、生貝のたぐい。

生貝があるのでしたら、
江戸寿司を握ってほしいと、思ってしまうのですが、
もちろん、そういうことは、
今まで、ありませんでした。



 







さて、それが。

よく行く、レストランがあります。
クリエイティヴに、魚介料理をしてくれます。
もちろん、ノルマンディー風に、です。
たまに、ちょっと日本料理的にも、
してくれます。

(魚を、ちょっとしか火を通さずに、
そして、お醤油や、出汁や、海藻のアレンジ)

評判も良くて、予約をしなければ、
席は取れないほどです。

そこのシェフが、
別館で、お寿司屋を始める、というのです。
見れば、看板を取り付けている最中です。
日の丸も、描かれています。
テイクアウト屋さんです。

おお、ついに来たか!
と思うと同時に、
あのシェフが作るお寿司なら、
ものすごく良さそう、と思います。
材料は、いつも、えり抜きだからです。
すぐに、ネットで予約をします。

すると、
なんと、始めたばかりの、
スタートの日でした。
手順はまだまだ、慣れていないようです。
予約したものを、時間通りに取りに行きますと、
「はい、〇〇さんですね」と、言うので、
あ、ちゃんと予約が取れていた、
ついに、お寿司が、手に入る、と喜びますと。

見れば、
のりを一枚、取り出しています。
それから、エビフライを揚げ始めています。
と、そういう段階です。

ええっと、驚きますが、
しかたありません。
25分くらい、待ちました。
顔を見てから作る寿司、と言うのは、
いい寿司です、と、心に言い聞かせて、
待ちました。

そして、やっと手に入ったのが、
上の写真です。
それは、それは、芸術的に、おいしかったです!
これは、江戸寿司のり巻きと、
ノルマンディーの、「合いの子」です。
新たな風合いです。

コリアンダーが入っていたり。
伊勢海老が入っていたり。
ノルマンディー産の生クリームチーズが入っていたり。
フォアグラが入っていたり。
そして、味のバランスは、最高です。
イクラは、分量が多すぎにも思えますが、
かまいません。
フライののり巻きなんて、知りませんでしたが、
おいしすぎです。
外がわには、揚げ玉が散らしてあります。

それも、
お重箱のような、りっぱな箱に、詰めてあります。
紙の箱ですが、
洗って、取っておきます。
また、何かに使えそうです。
















江戸寿司を、100パーセント、マネしなかったところが、
いいと、私は思います。
いくらマネしようとしても、
完璧には、できないでしょう。
そうではなくて、
ノルマンディーのいいところも、混ぜてしまったところが、
そして、
その混ぜ加減が、上手でしたので、
大成功だと思います。

あまり、感激したので、
夕方、その店のあたりを通った時に、
もう一度、寄ってみました。
そして、お店のお姉さんに、
素晴らしかったです、と言いました。
はい、そうですか、と嬉しそうにしていました。
「それは、彼が、いいアイディアを思いついたので。
いつもの通り」と指さします。
それは、シェフです。

「あぁ、シェフ、おいしかったです。
ずっと、この日を待ってたんですよ」

と、言いました。

「ありがとう、
それに、もう予約はたくさん入っています。
うまく行きそうです」

と、シェフが言います。
でも、なんとなく、それは、悲しそうでもあります。
苦しそうでもあります。
そして、私は、なんだろう、と
帰る道々、重い気持ちになります。
















そして、やっと、気がつきます。
お寿司は、
私にとっては、うれしい「ファーストフード」です。
でも、シェフにとっては、
そうシンプルではなかったのかもしれません。

この疫病のせいで、レストランの経営が、
ものすごくよくなかったのです。

「いいアイディア」を出したシェフですが、
それは、もしかすると、生き延びるための、
アイディアだったのです。
今、テラスは許可されていますが、
お店の中は、制限されています。
そして、去年は何ヶ月も、
閉鎖されていたのです。

そういえば、
彼のレストランの向かいは、
中華料理店です。
中華料理店は、出前や、お持ち帰りを、
よくやっています。

私だって、この地について、すぐに、
シェフのレストランのところへ聞きに行ったのです。
「いつもの伊勢海老バーガーを、
持ち帰り用に作ってくれますか?」
でも、答えは、ノンでした。
でも、こういうプロジェクトがあったのですね!

あの、中華料理のテイクアウトを見ていて、
このアイディアが浮かんだのかもしれません。
テイクアウト寿司を作るなんて、
シェフの誇りが、許さなかったかもしれません。
でも、そんなこと言ってられなかったのかもしれないです。

どんな苦悩が、ずっと、
シェフの頭を横切っていたのか、
私には、知ることもできません。


















さて、
デザートに、お菓子を買いにいきます。
お菓子屋さんは、
サロンドテが、閉鎖されていても、
まぁ、お菓子が売れますので、たぶん、
あまり疫病の打撃は受けなかったのではないかと思います。

この店の、パン・ド・エピス(スパイスパン)というお菓子は、
困るほど、おいしいです。
(食べ始めたら、止まらなくなります)
生クリームがたっぷり入った、
スパイケーキです。
それを、ひとかたまり切ってもらいます。
それから、
クロワッサンも、とびきりおいしいそうです。

さわると、カラッとしていますが、
実は、バターが、たっぷり入っています。
層になっている、その具合は、
細かく、薄く、レギュラーで、
見事です。
見ただけで、おいしいと、わかります。

はちみつをつけて、
カフェオレと、いただいたら、
これまた、芸術となりそうです。
私は、これをデザートとします。

きょうは、
食べ物の話でした。

























きょうも、読んでくださって、どうもありがとうございました。


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