貨物船の旅で、船乗りさんとふれあうのは、
とても楽しいひとときです。
私たち乗客を、歓迎して、
書類、案内などのめんどうを、見てくださったのは、
ボグダンという、第3士官の方でした。
まだ、学校に行っている、23才くらいの、
ていねいで、優しい人でした。
ある日、
「今晩は、ぼくが、8時からウォッチだから、
ブリッジまでいらっしゃい。
もし、天気がよければ、星が見られますよ』と、
誘ってくれました。
ウォッチというのは、
建物の最上階にある、操舵室(ブリッジという)で、
見張りをすることです。
私たちは、
喜んで行きました。
一日中、海の風と、強い太陽にあたっていると、
夜は、早めに、眠くなります。
でも、その眠い目をがんばってあけて、
ブリッジに登りました。
天気は良し!
星がざくざく、見られるはずです。
ブリッジは、まず、
カーテンでしきった、地図室だけが、
最小限のランプで、地図をてらしています。
カーテンをちょっとよけてみると、
向こうは、まっ暗。
カーテンをちょっとよけてみると、
向こうは、まっ暗。
部屋を暗くして、目を闇に慣らさないと、
なかなか、夜の海は、見えないのです。
そんな闇の中、おじゃまじゃないか、と、
ちょっととまどいながら、
来ました、と、告げます。
学生士官の方は、船長さんがいらしたせいか、
まじめそうにしてますが、
クルーの、フィリッピンの見張りの方は、
ものすごく、気さくに、
「やぁ〜いらっしゃい!」なんて言って、おしゃべりしてくれます。
しばらくして、船長さんが、下に降りますと。
私たちを誘ってくれた下士官の方が、
さぁ、お見せしましょう、と、
お相手をしてくれました。
お相手をしてくれました。
双眼鏡を貸してくれて、
「月をみてごらんなさい。
きれいだから!」と
ニコニコしています。
実は、目には良くないと言われているんですが、
私も、自分の小さなオペラグラスで、
月は、時々、ちょっとだけ、ながめています。
それを、
船乗りさんの、あの、強力な双眼鏡で、見たら、
目がつぶれるのではないか!と、
ちょっと心配でした。
でも、ボグダンは、ニコニコしているので、
のぞかせてもらいました。
ほほう!
これは、きれい。
双眼鏡で見る三日月は、
つるっとした形など、していません。
つるっとした形など、していません。
がさがさの、表面のせいで、
先っぽは、とんがっていません。
これは、
まさに、花王石けんのマークです!
まさに、花王石けんのマークです!
三日月を、人の顔にたとえて描いた人は、
目が良かったのでしょうか。
たとえでも、想像でもなく、
三日月は、ほんとうに、そういう形をしていました。
びっくりしました。
月が、すぐそこに見えていました。
(こんな感じ)
さて、ボグダンは、
星が大好きだそうです。
「おおぐま座、こぐま座、見えたでしょう?!」と
目をキラキラさせています。
星が好きなんですねぇ、
私もなんですよ。
と、言いますと、
私もなんですよ。
と、言いますと、
もっと若かったころ、
8月になると、
原っぱに、コートをしいて、そこにねころがって、
いつまでも、いつまでも星を見ていたんだ。
だって、ロマンチックなんだもん。
と、言っては、
また、仕事で、海を見ています。
また、仕事で、海を見ています。
彼、いい仕事を選んだなぁと、私は思いました。
たまに、フィリッピンの見張りの方の、
「あそこに、何か見えますけど、
あれは、月の光のせいでしょうかねぇ、
双眼鏡で、確認してみます」
なんていう声が、きこえます。
ハタから見てると、夜の海を見張る、という仕事は、
ロマンチックな作業に、見えます。
なるほど、
黒い水面は、一部分、月に照らされています。
ロマンチックな作業に、見えます。
なるほど、
黒い水面は、一部分、月に照らされています。
夜空は、三日月のせいで、真っ黒ではなかったです。
真っ黒だったら、もっと星が、ざくざく見えるはずでした。
三日月は、もうじき沈むから、
もうちょっと待てばよかったのですが、
もう、眠くてしかたない夫につきあって、
おいとましました。
ほんとうは、
もうちょっと、そこにいたかったのです。
ボグダンのウォッチが終わる、12時まで、
ただ、そこに、いたかったなぁ、と思いました。
夫と、別行動にすればよかった、と、
ちょっぴり、後悔しています。
もうちょっと、そこにいたかったのです。
ボグダンのウォッチが終わる、12時まで、
ただ、そこに、いたかったなぁ、と思いました。
夫と、別行動にすればよかった、と、
ちょっぴり、後悔しています。
双眼鏡で見張って、もし、
レーダーにひっかからない漁師の船があり、あぶなければ、
コンテナ船は、ボゥーっと、霧笛をならしたりします。
車のクラクソンと同じです。
ある晩、
何度も鳴る、ボゥーっという音で目がさめました。
なにごとだろうと、
いそいで窓の外を見れば、
あたりは、夜の霧で、なにも見えませんでした。
なにも見えない中を、進んでいるのです。
自分の船のあかりが、ちょっぴり見えるだけです。
なんとも、不安な感じがします。
でも、
あぁ、ウォッチの方が、霧笛をならしている。
おかげで、私は安心して眠っていられるなぁと、
ベッドにもどりました。
なんだか、むしょうにやるせない、悲しげな霧笛のひびきでした。
そして、また、眠りにつきました。
きょうも、読んでくださって、どうもありがとうございました。
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