
ここは、
船の首(?)
先頭の部分です。
舵取りデッキとは、ちょっとちがう雰囲気です。
風の強くない場所もあります。
だれもいません。
でも、
去年は、船首まで、行きませんでした。
こわくて、行けなかったのです。
行くまでの道のりが、こわくて。
まず、去年の船は、
長さが400メートルでしたから、
もし、船のまわりをぐるっと歩いたら、
1kmくらい。15分はかかります。
それに、
まわりを歩くと、さくの向こうは、
すごい波の海。
さく、といったって、ただの、2、3本の細い棒。
すぐそこは、海。
波の音がすごければ、
風もふいていたり、
船は、ゆれる、
ちょっとまちがえれば、おだぶつ、と思ってしまいます。
今年は、
夫が、連れて行ってくれました。
今年の船は、長さ200メートル。
船首までいくのに、3分ほど?
いずれにしても、行く前には、
オフィサーに、「行ってもいいですか」と、きかねばなりません。
風が強すぎる、とか
波が高い、とか
今、工事中、とか、
いろいろ、あぶない日も、あるようです。
飲み水、カメラ、おやつを持って、
船長さんのところへ、ききにいきます。
すると、
たいてい、「はい、いいよ」と言いながら、
ヘルメットをかぶる動作を、します。
ヘルメットをかぶれ、ということです。
白くて、新品のヘルメットです。
どんな人も、船のまわりのデッキ(メインデッキ)に出るときは、
ヘルメットをかぶることになっています。
もしコンテナや、部品が落ちて来たら、
という時のためなのでしょうか。
それと、
「メインデッキに行ってきます」とオフィサーに告げても、
だからといって、
もし、デッキから海におっこちても、
だれも、気づかないと、だれかが言っていました。
たしかに、そうです。
つまり、
自分の責任で、ひとりで、
自然の中で、歩いています。
顔にあたる、強い風。
波の音。
エンジンの音。
冷蔵コンテナのモーター音。
冷蔵コンテナの、なんとなく、アジア食品っぽいにおい。
ときたま、船のゆれ。
なるべく、さくからはなれて、波を見ないように、歩く。
そして、やっと、船首につくと、
静かで、ポカポカしています。
そんなところで、
あの、イルカを見たりしました。
トビウオも、見ました。
船は大きいですから、水面は、はるか下です。
それでも、
かなり大きく、見えたです。
上から見たトビウオは、
こうもり傘のように、大きくはねを広げて飛んでいました。
鳥なのか、
魚ななのか。
でも、水に戻って行ったところを見ると、
魚のようです。
小さい頃、トビウオが、
夕食に出てきたことがあるような気がします。
あれだったのでしょうか?
ところで、
例の船長さんのことです。
船の上では、各自が洗濯をすることになっていますが、
船長さんとか、機関長など、
上士官の人たちだけは、
スチュワードにやってもらう、というのが、
去年の船で見たことでした。
ところが、
今回は、
私たちが、洗濯室で、あたふたと
ほしあがったものを、出そうとしていると、
船長さんが、洗濯ものを、大きな手で、丸めて、
降りてらっしゃいました。
「あ、今、使用中なら、別に、いいですよ。
かまわないってば、あとでやるから!」と、
行っちゃいそうになる船長さん。
「いえいえ、もう、終わったので、どうぞ。
だけど、
船長さんは、洗濯もしなくちゃならないんですかぁ?
まぁ!」
と
私は思わず、つぶやいてしまいました。
自分は、
洗濯はいつも、自分でするようにしている、
ということでした。
ところで、洗濯乾燥機に、
はり紙がしてありました。
「みなさん。
船の上には、ママも、パパもいません。
彼らは、お家にいるんです。
(パパ、ママがやってくれると思わず)
どうぞ、毎回、フィルターを洗ってくださいね。
サンキュー!!!」
と、書いてあります。
くりかえ、しくりかえし「!」があって、
「これを読んで、この通りにして!」と書いてあるところを見ると、
もう、懇願というレベルです。
フィルターを洗わない人がいる。
それに困った方が、知恵をだして、
これなら、船乗りの琴線にふれるだろうと、
この、フレーズを、生み出したのではないかと思ってしまいました。
「ママも、パパも、いないんです」
というところです。
船乗りの方々、
3ヶ月、6ヶ月か、もしくは、
9ヶ月も、家族とはなれての、
お仕事です。
この、はり紙。
なんだか、
しんみり、くるような気がしました。
きょうも、読んでくださって、ありがとうございました。

にほんブログ村
0 件のコメント:
コメントを投稿