今、夏休みで、ノルマンディー地方に来ています。
きのうは、思いがけず、「お寿司」をいただけました。
フランスでは、もうこのごろでは、
お寿司パックが、簡単に手に入るようになりました。
ですが、
それは、日本人が作っているものではなくて、
ネタも、
味も、ちょっと怪しげなものが多いです。
買ったことは、あまりありません。
ここ、海辺では、
新鮮な海の幸がたくさん手に入るので、
ぜひ、いいお寿司を作ってほしいと、
ずっと思っていました。
それが、
この地方の方々は、
何しろ、生クリーム大好きですから、
お魚料理も、生クリームソースがほとんどです。
お刺身なんて、ありません。
かろうじて、あるのは、
生ガキ、生貝のたぐい。
生貝があるのでしたら、
江戸寿司を握ってほしいと、思ってしまうのですが、
もちろん、そういうことは、
今まで、ありませんでした。
さて、それが。
よく行く、レストランがあります。
クリエイティヴに、魚介料理をしてくれます。
もちろん、ノルマンディー風に、です。
たまに、ちょっと日本料理的にも、
してくれます。
(魚を、ちょっとしか火を通さずに、
そして、お醤油や、出汁や、海藻のアレンジ)
評判も良くて、予約をしなければ、
席は取れないほどです。
そこのシェフが、
別館で、お寿司屋を始める、というのです。
見れば、看板を取り付けている最中です。
日の丸も、描かれています。
テイクアウト屋さんです。
おお、ついに来たか!
と思うと同時に、
あのシェフが作るお寿司なら、
ものすごく良さそう、と思います。
材料は、いつも、えり抜きだからです。
すぐに、ネットで予約をします。
すると、
なんと、始めたばかりの、
スタートの日でした。
手順はまだまだ、慣れていないようです。
予約したものを、時間通りに取りに行きますと、
「はい、〇〇さんですね」と、言うので、
あ、ちゃんと予約が取れていた、
ついに、お寿司が、手に入る、と喜びますと。
見れば、
のりを一枚、取り出しています。
それから、エビフライを揚げ始めています。
と、そういう段階です。
ええっと、驚きますが、
しかたありません。
25分くらい、待ちました。
顔を見てから作る寿司、と言うのは、
いい寿司です、と、心に言い聞かせて、
待ちました。
そして、やっと手に入ったのが、
上の写真です。
それは、それは、芸術的に、おいしかったです!
これは、江戸寿司のり巻きと、
ノルマンディーの、「合いの子」です。
新たな風合いです。
コリアンダーが入っていたり。
伊勢海老が入っていたり。
ノルマンディー産の生クリームチーズが入っていたり。
フォアグラが入っていたり。
そして、味のバランスは、最高です。
イクラは、分量が多すぎにも思えますが、
かまいません。
フライののり巻きなんて、知りませんでしたが、
おいしすぎです。
外がわには、揚げ玉が散らしてあります。
それも、
お重箱のような、りっぱな箱に、詰めてあります。
紙の箱ですが、
洗って、取っておきます。
また、何かに使えそうです。
江戸寿司を、100パーセント、マネしなかったところが、
いいと、私は思います。
いくらマネしようとしても、
完璧には、できないでしょう。
そうではなくて、
ノルマンディーのいいところも、混ぜてしまったところが、
そして、
その混ぜ加減が、上手でしたので、
大成功だと思います。
あまり、感激したので、
夕方、その店のあたりを通った時に、
もう一度、寄ってみました。
そして、お店のお姉さんに、
素晴らしかったです、と言いました。
はい、そうですか、と嬉しそうにしていました。
「それは、彼が、いいアイディアを思いついたので。
いつもの通り」と指さします。
それは、シェフです。
「あぁ、シェフ、おいしかったです。
ずっと、この日を待ってたんですよ」
と、言いました。
「ありがとう、
それに、もう予約はたくさん入っています。
うまく行きそうです」
と、シェフが言います。
でも、なんとなく、それは、悲しそうでもあります。
苦しそうでもあります。
そして、私は、なんだろう、と
帰る道々、重い気持ちになります。
そして、やっと、気がつきます。
お寿司は、
私にとっては、うれしい「ファーストフード」です。
でも、シェフにとっては、
そうシンプルではなかったのかもしれません。
この疫病のせいで、レストランの経営が、
ものすごくよくなかったのです。
「いいアイディア」を出したシェフですが、
それは、もしかすると、生き延びるための、
アイディアだったのです。
今、テラスは許可されていますが、
お店の中は、制限されています。
そして、去年は何ヶ月も、
閉鎖されていたのです。
そういえば、
彼のレストランの向かいは、
中華料理店です。
中華料理店は、出前や、お持ち帰りを、
よくやっています。
私だって、この地について、すぐに、
シェフのレストランのところへ聞きに行ったのです。
「いつもの伊勢海老バーガーを、
持ち帰り用に作ってくれますか?」
でも、答えは、ノンでした。
でも、こういうプロジェクトがあったのですね!
あの、中華料理のテイクアウトを見ていて、
このアイディアが浮かんだのかもしれません。
テイクアウト寿司を作るなんて、
シェフの誇りが、許さなかったかもしれません。
でも、そんなこと言ってられなかったのかもしれないです。
どんな苦悩が、ずっと、
シェフの頭を横切っていたのか、
私には、知ることもできません。
さて、
デザートに、お菓子を買いにいきます。
お菓子屋さんは、
サロンドテが、閉鎖されていても、
まぁ、お菓子が売れますので、たぶん、
あまり疫病の打撃は受けなかったのではないかと思います。
この店の、パン・ド・エピス(スパイスパン)というお菓子は、
困るほど、おいしいです。
(食べ始めたら、止まらなくなります)
生クリームがたっぷり入った、
スパイケーキです。
それを、ひとかたまり切ってもらいます。
それから、
クロワッサンも、とびきりおいしいそうです。
さわると、カラッとしていますが、
実は、バターが、たっぷり入っています。
層になっている、その具合は、
細かく、薄く、レギュラーで、
見事です。
見ただけで、おいしいと、わかります。
はちみつをつけて、
カフェオレと、いただいたら、
これまた、芸術となりそうです。
私は、これをデザートとします。
きょうは、
食べ物の話でした。
きょうも、読んでくださって、どうもありがとうございました。
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