こういう景色が、前も後もぐるーっと360度見えます。大西洋に、たった一人という気分。 |
さて、
私は貨物船の旅が、大好きです。
と言うと、
「なにか、船会社に知り合いがあるのですか」
と、きかれることが、たまにあります。
ですが、
そうではありません。
お金を払えば、だれでも乗れます。
それに、
貨物船は、いろんなところを、
一年中、走っています。
ですから、
「私、こういう時期に、時間がとれたんですけど、
どんな航路がありますか」と、
船会社に、聞いてみる。
すると、
たくさんの提案を、してくれます。
とてつもなく大きな貨物船には、
だいたい20数人、人が乗っています。
ふつうの客は、1〜2人乗せてくれます。
船乗りのみなさんは、お仕事中。
私たち客員は、バカンス中。
ですから、
私は、なんとなく、どこに身をおいていいのか、
はじめは、ぎこちなく、感じます。
みなさん、口が少ないですけれど、
それでも、
歓迎してくださっているのは、伝わってくるような気がします。
でも、
どうやって、うちとけたらいいのか、
いつ、どこで、どんなふうに。
それが、よくわからないです。
なすがままにするほか、ありません。
3度の食事は、
士官さんたちの食堂、メスルームというところで、
とります。
そこが、
一番、私の苦手で、かつ、大好きなところでもあります。
理由は、
みなさん、中国語で、話をしてらっしゃる。
英語は、伝わるけれど、
仕事の話か、
それとも、何気ない話をしてるのか、わかりませんけど、
私は、会話に、入れません。
でも、
たまに、英語で、会話が成り立つこともあります。
私の英語がヘタなせいで、
なんどもくり返し、聞きかえすのは、
気がひけます。
ですから、
とてもシンプルな会話になります。
が、お話しできる時は、うれしい!
船に乗りこんで、間もないある日。
夕食を終えて、
自分たちのキャビンにもどろうと、階段をのぼろうと
していましたところ。
4〜5人の士官さんたちに、ささっと、取り囲まれてしまいました。
まるで、ユウカイされそうな感じで、です。
そして、
「さて、これから、
どんなアクティビティを、予定してるのですか?
チェスなんか、どうですか?」
と、聞いてきます。
とても、強引な感じです。
つい、私たちは、
「えーっと、
はい、チェス、いいですね」と
答えてしまいました。
その、強引な感じ、というのが、
いかにも、かわいらしいです。
なぜかというと、
計画して、
客員さんたちに接近しよう、っていう
おもわくが、あったようなのが見えるからです。
実に、フレンドリーな「おもわく」です。
その勢いで、
じゃあ、客員の娯楽室へ行きましょう、と、
みんなで、一緒に遊ぶことになりました。
とびきりおいしい紅茶を、
すてきな中国の急須で、いれてくれたり、
いろんな話をしたり。
「娘さんは、何人兄弟?
あぁ、妹さんがいるんですね。
この、Y君にも、妹がいる、お兄さんもいる。
僕たちは、みんな一人っ子だけど」
若い下士官の人たちは、
日本に興味があって、
いろいろ聞いてきます。
だいたい、日本にあこがれています。
温泉に行きたい、とか。
それはいいけれども、
たまに、歴史のことを聞かれます。
すると、私は、つらいです。
私は、歴史をよく知らないのと、
なんだか、私の国が、
なにかまずいことをしてしまったような、
そんな気がするからです。
でも、気まずくなったら、
みなさんも気をつかって、楽しい話にもどって。
私は、中国に興味がありますから、
紙とペンで、
いろいろ、話をします。
(若いみなさん、漢字が、じょうず!まるで、
筆で書いているみたいです)
それが、楽しいです。
中国の人と話したのは、
初めてです。
そのあと、
また、
話し出したら、長〜くなってしまいますが、
餃子を一緒に作らせてもらいました。
長い時間をかけて、
船長さんから下士官まで、みんなで、
粉から、肉をひくことやら、野菜をイヤというほど刻むことやら、
一緒にやって、
一緒にいただく。
それは、
私にとっては、
今回の旅のクライマックスという楽しさでした。
(↑ 急に、雨がばらばら、ふってくる)
その、楽しさ、
船乗りさんたちの、とってもいい笑顔、
いい雰囲気の写真も、いくらかあるのです。
ほんとうは、ここにのせたく思い、
顔を伏せて、のせようか、とか、
いろいろためしましたが、
どうも、うまくいきませんので、
あの夕ごはんあとの、チェス遊びの時、
あんなに、いいお天気だったのに、
ばーっと、雨がふってきて、
みんなで、おどろいて、
「これが、船の生活さ〜!」と、
みんなで笑った時の写真を、
かわりに、のせました。
船に乗ってると、
予告なしに、急に天候がかわったりすることが、
しょっちゅうあるのだそうです。
(↑ 船を降りずに、見張りに立っている士官さん。
降りる人は、ここでサインしてから降ります)
寄港しても、
船乗りさんたちは、船からおりられるとは、
かぎりません。
昔は、何日間も停泊していたそうですから、
そういう余裕もあったようですけれど、
今では、そうもいきません。
すると、
降りられる人は、ラッキーです。
何ヶ月ものあいだ、船の上で、仕事をしているのです。
土が恋しくなるのは、わかります。
私たち客員にも、
ぜひ、いってらっしゃい、と、
すすめてくださるのですが、
どちらかというと、
私は、お金をはらってまで、船にのっているのです。
別に、土をふむことには、魅力がありません。
ですが、
みなさん、うらやましい、と言いながら、
いろいろ算段してくださるので、
それをムゲにするのも、申しわけなく、
2度、おりてみました。
2度目は、
アメリカの、チャールストンという港です。
夜もおそいし、
船にもどってくるのに、手違いがあったら、
どうしよう、
私たちをおいて、船が発っていっちゃったら、どうしよう、と
不安でした。
そんな話をしたら、
じゃぁ、
これから、士官の人が、何人か買い物にいくから、
それについてらっしゃい、と
算段してくれました。
この人たちに、くっついてらっしゃい、
離れちゃダメですよ、と、
念をおして、
見送ってくれました。
アンラッキーにも、船をおりられない士官さんが、です。
そのたびに、
なんとなく、申しわけないなぁ、と思います。
でも、そういう仕事なんですから、
しかたありません。
そして、蒸し暑い夜、
若いみなさんと、スーパーに行ったり、
電気製品の量販店に行ったりしました。
なんだか、学生のころの自分を思い出して、
若返ったような気持ちになりました。
楽しかったです。
すっかりなじんでしまって、
最後の日、
みなさんとは、別れがつらかったです。
本のはなし(日本の本、中国の本)をしたり、
星を一緒に見て、
星座のアプリで、これがどうのこうの、とか。
クジラが潮を噴いてますよ、見にいらっしゃい、と
キャビンに電話してくれたり。
船の一番高いところにある、操縦室に行けば、
おいしいお茶を、いれてくれたり。
ピンポン教えてもらったり。
みなさん、元気にしてるかな、
便りをくれたらいいのにな、
と、思います。
きょうは、
ずいぶん、長くなりました。
ここまで、読んでくださってどうもありがとうございました。
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