2018年9月5日水曜日
いつもいい天気とはかぎらない(貨物船の旅)
きょうは、船酔いについて、書きます。
実は、
私は、はじめ、それが心配でした。
ですので、
2年前、はじめて船に乗ったときは、
もしアウトなら、すぐおりられるように、と、
しょっちゅう寄港するルートをえらびました。
結果は、
だいじょうぶでした。
むしろ、
ゆらゆらと、ゆられているのが心地よく、
眠るにも、ちょうどいい、という感想でした。
もう少し、荒れた海をみてみたい、などと、
おそれおおいことを、考えたりしました。
今年乗った船は、
フロリダ号といいますが、
300メートルと、長いわりに、
幅が30メートルちょっと、という細長い船でした。
ということは、縮小してみれば、
30センチの、ものさしのような格好に、なります。
実に細い感じです。
そのせいでか、
横ゆれが、多い船でした。
横ゆれは、ローリングといいます。
たまに、
あ、ローリングがきたきた、と、
私は、心の中で、様子を見まもります。
ローリングの中で、
ピンポンをやりたいとも、ふだんから思っていましたので、
それが実現したときは、
ちょっと、得意な気持ちになりました。
私は、もともとピンポンがへたですから、
いったい、それは、
腕があがったのか、
ローリングのせいでミスをしたのか、
ローリングのせいで、よく打ててしまったのか、
区別がよくつきません。
なかなか、できない、めずらしい体験です。
ある朝、
のんきに起きますと、
なんだか、ゆれが、激しいようです。
夫は、もうずっと前から起きていて、
一番上の、ブリッジ(操舵室)で様子をみていたそうです。
その話によれば、明け方は、
ものすごい荒れだったそうです。
船乗りさんたちも、ずいぶん、
のぼってきては、様子を見に来たそうです。
船酔いにかかってしまった人もいるとのこと。
なるほど、
朝ごはんにおりますと、
だれもいません。
私は、どうしてもごはんを食べとかなきゃ、と思ったのです。
こういうとき、
おなかが空っぽ、というのは、よくないということです。
お勝手をのぞくと、給仕さんは、
大きなため息をついて、
身ぶるいしてから、
ごはんを運んできてくれました。
なんだか、具合よくないみたいです。
プロの船乗りさんでも、船酔いはするのです。
そういう時に、おさんどんをするのは、
ずいぶん、つらいだろうと思います。
↑ (今でも、こういう写真をみつめていると、だんだん
ナマツバがでてきて、船酔いしそうになります)
私は、持ってきた梅干しと、
お水を飲み、
絵を描いて、集中していれば、
気も散るかもしれないと、なんとなく、すごしていました。
お昼は、テーブルについたとき、
給仕さんが、
おなかのあたりを、さすりながら、
「マーム、大丈夫ですか?」
と、心配してくれます。
「ええ、大丈夫です、
でも、お肉は、半分にしときます」
そういえば、
あまり食欲ありません。
午後になっても、
ゆれは、続きます。
はじめは、なんだか、ゆかい、なんて思っていましたが、
だんだん、
腰がつかれてきます。
すわっていても、
前、うしろ、前、うしろ、という運動を、
つづけているのです。
だんだん、絵の具をまぜるのも、
むずかしくなってきます。
筆だって、あてずっぽうのほうに、いっちゃいます。
さすがに、梅干しを食べても、
気分がすっきりしなくなってきます。
しかたなく、ベッドに横になる。
すると、ずいぶんラクになって、
そういえば、
さっきの、階段をのぼるときは、
すごかったなぁ、と思い出したりします。
足をあげなくても、足がかってに、のぼってしまう。
船のゆれが、からだを、グインと、
押し上げてくれちゃうのです。
私は横になって、
目をつぶっていられますが、
お仕事の人たちは、
大変だろうな、と思います。
じっと、一点をみつめたり、
本を読もうとすると、
とたんに、気分がワルくなります。
荒海を見てみたい、なんていう気持ちは、
もう、どこかへ消えてしまいます。
もう、いいかげんに、もとの海にもどっておくれ、と
言いたくなります。
さいわい、午後のおわりには、
少しずつ、おさまってくる気配でしたので、
ピンポンをしに行きました。
だいたい、夕方には、スポーツジムに行くことが多いです。
まだまだ、ローリングも、
また、ピッチング(たてゆれ)もあります。
こうなると、複雑です。
玉も、あさって、しあさっての方に、いきます。
それを追っているうちに、
なんとなく、気分もふつうに戻りました。
夕ごはんは、すっきり、いただけました。
船長さんに、
ピンポンをしたら、
よくなかった気分が、なおってしまいました、と、
伝えますと、笑って、
「そう、そういうこと、よくあります」とおっしゃってました。
船乗りさんに、
ゆれとか、船酔いのことをきいても、
およそ、
かゆいところに手の届く答えは、ありません。
たとえば、このゆれ、
これは、「荒れた海」のはんちゅうに入るんですか?
ときけば、
「なぁに、こんなの、
ちゃらちゃらですよ(a piece of cake!)」とか、
酔うことは、ありますか、とたずねても、
答えはなく、
「機関部の、だれそれは、ものすごく酔う。
かわいそうなくらい」とか。
でも、
機関部の、当の本人と話しても、
そんな話は、きかれません。
「ゆれるときは、仕事に集中してると、
すぐ、なんとかなる」と言ってらっしゃる。
私は、思います。
船乗りさんだって、人間だから、
やっぱり、酔うのだろうと思います。
でも、
「はい、ぼくは、船酔いします」と、
言わないところが、
なんだか、とってもカッコいい、と
私は思います。
さて、
私は、よく、ブリッジにのぼって、
海図(チャート)を見せてもらいました。
今、自分はどこにいるのか。
海の深さは、どのくらいなのか。
ええっ、5000m?
いったいどんな動物がいるのだろう、などなど。
そして、世界地図もながめて、
船乗りさんたちに、
どこの海で、どういう季節に、海が荒れるのかも、
教えてもらったりしました。
実は、この先、いつになるかわかりませんが、
フランスから日本の方に、船でいってみようと計画しています。
日本のそばには、
荒れる海が、多いようです。
ところで、
私は、お茶が好きです。
旅行には、かならず、湯沸かしや、マグカップを持っていきます。
船では、食事が中華でしたので、
食後にお茶が出るかと思っていましたら、
出ません。
みなさん、お茶を飲まれないのかしら、と、
ふしぎに思っていましたところ、
しばらくして、
みなさん、キャビンで、
本格的に、お茶を入れてらっしゃるということが、
わかりました。
そして、
私たちにも、とてもおいしいお茶をひとつかみ、くださったりしました。
ブリッジ(操舵室)にのぼれば、
必ずお茶をいれてくださる士官さんもありました。
とびっきりおいしい、紅茶です。
それが、一杯ではなくて、
かならず、2杯!
できたら、3杯入れてくれそうになります。
それが、なんだか、
なるべく、長いこと、ここにいてください、
と言ってくださってるような気が、
私は、します。
船長さんは、ブリッジにのぼると、
大きなガラスのコップに、
緑茶をたっぷり入れて、お湯を注ぐ。
そうして、しばらくほっておくと、
だんだん、葉っぱがひらいてきます。
すきとおったコップに、それがよく見えます。
とても、きれいです。
そういうお茶を、飲んでらっしゃいました。
印象的でした。
きょうも、読んでくださってどうもありがとうございました。
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2 件のコメント:
Chiyoさん、こんばんは。
フロリダ号の船体が30㎝のものさしに例えられていて笑っちゃいました。
とても分かりやすくて、直ぐにイメージ出来ました。
船乗りさんだからと言って、船酔いしないとか慣れる訳では、やはりない
のですね。仕事とはいえ、辛いことだと思いました。
それに、自分が船酔いする、だなんて、プライドもあるでしょうし、男が
すたる(?)ので、船員さんたちがとぼけるのも人間臭くて面白く感じ
ました。
中国の方はお湯呑みやグラスに、直接茶葉を入れ、お湯を注いで飲む方も
いらっしゃるようですね。TVで見たことがあります。
実は私も、一人で少しだけお茶が欲しい時、そのようにして飲みます。
不精ですね。
茶葉と言えば、普通の茶葉ではなく、小さい手まりのように細工してある
特殊なものや、水中花のようにお湯の中で花が開く、工芸茶と呼ばれる
ものも、風味、香りも多様で、見た目もきれいなので楽しいですよね。
良いことばかりではない貨物船の旅、でもだからこそ、印象に残る
思い出を後々まで楽しめるのですね。
有難うございました。
たま
たまさん、こんにちは。
コメント、ありがとうございました!
ええ、そうですね、
「男がすたる」という言いまわし、
なつかしいです。
まさに、そういう感じです。
お茶が、水中できれいに咲く、
その感じは、
ほんとうに、水中花です。
それまた、なつかしく、
水ようかんや、夏の涼しげな和菓子を、
思い出してしまいました。
お一人のときは、
そうやってお茶を飲まれるとのこと。
それは、いい考えですね。
私も、こんど、ガラスのコップで、
楽しんでみたい、と思います。
ありがとうございました。
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