2017年8月13日日曜日

ここには、ママもパパもいない(貨物船の旅)


ここは、
船の首(?)
先頭の部分です。
舵取りデッキとは、ちょっとちがう雰囲気です。
風の強くない場所もあります。
だれもいません。

でも、
去年は、船首まで、行きませんでした。
こわくて、行けなかったのです。
行くまでの道のりが、こわくて。

まず、去年の船は、
長さが400メートルでしたから、
もし、船のまわりをぐるっと歩いたら、
1kmくらい。15分はかかります。

それに、
まわりを歩くと、さくの向こうは、
すごい波の海。
さく、といったって、ただの、2、3本の細い棒。
すぐそこは、海。


波の音がすごければ、
風もふいていたり、
船は、ゆれる、
ちょっとまちがえれば、おだぶつ、と思ってしまいます。

今年は、
夫が、連れて行ってくれました。
今年の船は、長さ200メートル。
船首までいくのに、3分ほど?
いずれにしても、行く前には、
オフィサーに、「行ってもいいですか」と、きかねばなりません。

風が強すぎる、とか
波が高い、とか
今、工事中、とか、
いろいろ、あぶない日も、あるようです。


飲み水、カメラ、おやつを持って、
船長さんのところへ、ききにいきます。
すると、
たいてい、「はい、いいよ」と言いながら、
ヘルメットをかぶる動作を、します。

ヘルメットをかぶれ、ということです。
白くて、新品のヘルメットです。



どんな人も、船のまわりのデッキ(メインデッキ)に出るときは、
ヘルメットをかぶることになっています。
もしコンテナや、部品が落ちて来たら、
という時のためなのでしょうか。

それと、
「メインデッキに行ってきます」とオフィサーに告げても、
だからといって、
もし、デッキから海におっこちても、
だれも、気づかないと、だれかが言っていました。

たしかに、そうです。
つまり、
自分の責任で、ひとりで、
自然の中で、歩いています。

顔にあたる、強い風。
波の音。
エンジンの音。
冷蔵コンテナのモーター音。
冷蔵コンテナの、なんとなく、アジア食品っぽいにおい。
ときたま、船のゆれ。

なるべく、さくからはなれて、波を見ないように、歩く。



そして、やっと、船首につくと、
静かで、ポカポカしています。
そんなところで、
あの、イルカを見たりしました。



トビウオも、見ました。
船は大きいですから、水面は、はるか下です。
それでも、
かなり大きく、見えたです。
上から見たトビウオは、
こうもり傘のように、大きくはねを広げて飛んでいました。

鳥なのか、
魚ななのか。
でも、水に戻って行ったところを見ると、
魚のようです。

小さい頃、トビウオが、
夕食に出てきたことがあるような気がします。
あれだったのでしょうか?



ところで、
例の船長さんのことです。

船の上では、各自が洗濯をすることになっていますが、
船長さんとか、機関長など、
上士官の人たちだけは、
スチュワードにやってもらう、というのが、
去年の船で見たことでした。

ところが、
今回は、
私たちが、洗濯室で、あたふたと
ほしあがったものを、出そうとしていると、
船長さんが、洗濯ものを、大きな手で、丸めて、
降りてらっしゃいました。

「あ、今、使用中なら、別に、いいですよ。
かまわないってば、あとでやるから!」と、
行っちゃいそうになる船長さん。

「いえいえ、もう、終わったので、どうぞ。
だけど、
船長さんは、洗濯もしなくちゃならないんですかぁ?
まぁ!」

私は思わず、つぶやいてしまいました。

自分は、
洗濯はいつも、自分でするようにしている、
ということでした。




ところで、洗濯乾燥機に、
はり紙がしてありました。

「みなさん。
船の上には、ママも、パパもいません。
彼らは、お家にいるんです。
(パパ、ママがやってくれると思わず)
どうぞ、毎回、フィルターを洗ってくださいね。
サンキュー!!!」

と、書いてあります。
くりかえ、しくりかえし「!」があって、
「これを読んで、この通りにして!」と書いてあるところを見ると、
もう、懇願というレベルです。

フィルターを洗わない人がいる。
それに困った方が、知恵をだして、
これなら、船乗りの琴線にふれるだろうと、
この、フレーズを、生み出したのではないかと思ってしまいました。
「ママも、パパも、いないんです」
というところです。

船乗りの方々、
3ヶ月、6ヶ月か、もしくは、
9ヶ月も、家族とはなれての、
お仕事です。

この、はり紙。
なんだか、
しんみり、くるような気がしました。

きょうも、読んでくださって、ありがとうございました。


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